グリセロホスホコリン摂取による子供の身長への影響調査
2022年、GPCを摂取することにより、子どもの身長の伸びに対する影響を臨床試験しました。
はじめに
低身長の子どものストレス適応を示す心理社会指標の中で、身長ストレスの「身体的不便さ」は健常集団と比較して高い傾向があり、「身体的不便さ」は、低身長の子どもの施弱因子になることがわかっている”。子どもの身長の伸びが標準的な範囲(標準偏差土2.0)を大きく外れて、低身長症と診断されれば、成長ホルモン治療を受けることができる。しかし、特に低身長でなくとも、一般的に、身長が高いことに憧れるのはまれではない。年頃の男女だけでなく、子どもについても当てはまる。
子どもの背が伸びるには、成長ホルモンの働きが不可父である。グリセロホスホコリン(GPC)
は、成長ホルモン分泌刺激ホルモン(GHRH)
と接合して下垂体前葉より分泌される内因性ヒト成長ホルモンを増加させる働きをもつ?。被験者に GPCを1,000mg摂取させる研究では、摂取1時間後に成長ホルモン濃度は有意に上昇し、一過的に成長ホルモンが分泌されるのが認められた。脳のコリン作動性の刺激は、視床下部から成長ホルモン(GH) 分泌を増やすことが知られている31)。そこでわれわれは、「GPCを12歳以下の男女に毎日摂取させて、身長の伸びについて評価したので報告する。
I. 対象および方法
1. 被験者
1) 対象
株式会社クラウディア(東京)が株式会社マグナ(東京)を通じて一般募集し、選択基準を満たし、除外基準に合致せず、試験への参加を保護者が認め、被保護者自らも希望する者を被験者とした。
2)選択基準
未就学児から中学生までの男女
3)除外基準 食物に対するアレルギーの既往歴のある者試験に影響がある/医薬品を服用している者試験に影響がある/健康食品を摂取している者
2. 試験デザイン・試験品・試験スケジュール
1) 試験デザイン
試験品を摂取するグループ(試験品群)と対照品を摂取するグループ(対照品群)を設定し、介入実施者と測定者をブラインドとする二重盲検試験とした。日本臨床試験協会(JACTA.
東京)が、株式会社クラウディアからデータの提供を受け、解析と監修を行った。
2) 試験品
試験品はグリセロホスホコリン (以下、GPC)で、GPC 400mgを水で溶かしてペットボトルに封入した1本(200mL)を毎日摂取させた。試験品は、株式会社クラウディアより提供された。
3) 試験スケジュール
試験期間は2020年7月から11月までの4カ月間とし、開始前・2カ月後・4カ月後の3回、身長の測定を行った。試験期間中は、評価に影響する新たな医薬品の服用や健康食品の摂取を開始しないこと、通常の生活を維持することを指示した。試験スケジュールを表1に示す。
4) 無作為化
選択基準を満たし、除外基準に合致しない30人を選択したのち、試験に関係のない割付責任者が、偏りを防ぐために年齢を考慮したうえで
2グループに15人ずつ割り付けた。割付内容は割付責任者が厳重に保管し、データ固定後に開示した(キーオープン)。
5) 被験者の制限事項および禁止事項
すべての被験者とその保護者に対し、試験期間中は試験参加前の通常の生活を送るよう指導した。
3. 評価項目
身長について、測定員が「身長計付き体重計
BH-200A」(株式会社タニタ)を用いて計測した。
4. 統計処理
解析対象はPPSとした。測定値は平均値士標準偏差で示した。開始前との比較は対応のあるt検定を行い。各群の使用前と4カ月後の変化量の比較については Studentのt検定を行った。サンプルサイズとデータの多重性は考慮せず、欠損値はなかった。いずれも両側検定で危険率5%未満(p<0.05)を有意差ありと判定した。統計解析ソフトは、Statcel 4(柳井久江、2015)を使用した。
II. 結果
1.被験者背景
選択基準に合致する 30人が試験を開始し、試験を完遂した。監修者の判断により、開始時の年齢と性別に基づく平均身長(文部科学省
「学校保健統計調査報告書」)よりも背の高い者を除外し、10人(男6・女4,4~12歳,平均
8.1土2.8歳)を解析対象とした。解析までのフローを図1に、解析対象被験者の背景を表2に示す。開始前の年齢・身長に関して群間の偏りはなかった。
2. 身長の結果
結果の推移を表3に示す。対照品群との比較で、2カ月後に減少の傾向がみられた。
開始前との比較では、試験品群・対照品群ともに2カ月後・4カ月後に有意な増加(改善)
がみられた。
3.安全性
本試験において有害事象の発現はなく、試験品の安全性には問題がないと考えられた。
Ⅲ. 考察
生まれたときに身長50cm前後の赤ちゃんは、
1年目に25cm、2年目に10cm、3年目に8cm.
4年日に7cm伸びて、4歳で100cm前後になる。これは、身長の高めの子も低めの子も、ほは同じである”。背が急激に伸びるこの4年間に大きく関与しているのは栄養摂取である。思春期の成長には性ホルモンが重要な働きをするが、それまでの小児期にあたる時期に大きく関わるのが「成長ホルモン」である。成長ホルモンの分泌量が多い子ほど身長が高く、分泌が少ない子ほど身長が低いことがわかっている。
そこでわれわれは、12歳以下の男女を対象に、試験品「GPC」摂取を4カ月間継続する試験品群と、対照品群を設定し、被験者と測定者をブラインドとする二重盲検試験を実施した。4カ月間継続・完遂した被験者から、開始時の身長が平均身長より背の低い者を解析対象とした。
その結果、開始前との比較において、試験品群・対照品群ともに2カ月後・4カ月後に有意な増加がみられた。試験品群と対照品群との比較では、有意な差には至らなかったが、試験品群の方が変化量の平均値が大きかったことは、GPC 摂取によって、成長ホルモンの分泌が促進されたことが影響していると考えられた。これは従前の、GPC合有食品を摂取することによって、18歳以降の被験者3人においても、成長ホルモン上昇が確認された研究”とも矛盾がない。本研究は、4カ月間で行われたが、さらに期間を設けることで差異がみられる可能性も考えられることから、長期間での経過を観察する今後の研究に期待したい。
文献
1) 西村直子、花木啓一:低身長児(者)の心理社会的
適応とその保護者が子どもの社会生活や治療経過に持つ認識.大手前大学論集 20:125-137,2021.
2) 日比野英彦:脱アシルリン脂質:グリセロホスフォ
コリンの調製と中枢賦活機能剤の開発.オレオサイエンス 7(10):399-411,2007.
3) 日比野英彦、大久保剛:脂質系栄養素:コリンの普及に際し、アメリカの現状から。脂質栄養学 26(1):
89-106. 2017.
4) 大久保間:脂質摂取による睡眠への影響。オレオサイエンス 19(7):279-284, 2019.
5) 独立行政法人国立病院機構四国こどもとおとなの医療センター.こどもvol.01子供の成長について、
https://shikoku-mc.hosp.go.jp/news/ohisama_basics.
html [2022年1月27日参照]
6) ファイザー株式会社,成長相談室
https://ghw.pfizer.co.jp/smartp/grow/about.html
7) 田中敏章:子どもの成長・発達一人ひとりの子どものために成長曲線を描こう 第2版、公益財団法人は子衛生研究会.2015
8)金子 剛:グリセロホスホコリンとビオチンを含む栄養機能食品の成長ホルモンに対する効果。先端医療と健康美容 5(1):2018.